ELSI大学院コースで生命誕生の謎を探求

地球生命研究所(ELSI)は、生命と惑星の起源と進化を探求する新しい総合大学院コースを開設した。

ELSIは、修士号と博士号を統合した5年間の新しい大学院コースを2022年から開設予定。

これはAsia Research News 2022マガジンに掲載された記事の日本語訳です。オンライン版を読むにはISSUUをクリック、ウェブ版はこのままスクロールしてください。

Read the English version here - ELSI graduate course tackles fundamental questions of life

Asia Research Newsから研究ニュースを受信しましょう。メルアドだけで無料登録


地球はどのように形成され、そこで生命はどのように誕生したのか?他の惑星で生命が誕生するために必要な条件とは何か? 東京工業大学地球生命研究所(ELSI)は、これらの根本的な疑問に挑戦する新しい大学院コースを開始する。 修士号と博士号を統合した5年間コースは、同学地球惑星科学部と生命理工学部と共同で2022年から開設される予定だ。本コースの学生は、ELSI所属でELSIの教員の指導の下で学ぶ。

バイオテクノロジー学教授で本コースのスーパーバイザーである松浦友亮教授。

地球生命科学の未来のリーダー育成

ELSIは、2012年設立の独立した研究所。惑星と生命の起源及び進化の研究を通して、天体物理学から地質学、化学、生物学に至るまで、世界をリードする科学者を何百人も集め、自然科学の中でも最も困難な課題に挑戦することを使命としている。大学院コースの開設は、そのELSIで初めて学生を受け入れるという同所にとって重要な新たなステップとなる。

「過去10年間で、ELSIはよく整備され、成熟した研究所に成長しました」とバイオテクノロジー学教授で、本コースのスーパーバイザーである松浦友亮は言う。「私たちはトップレベルの科学研究を行うにあたって理想的な環境と、グローバル規模の研究者ネットワークを作り上げました。今こそ、こうしたリソースを使用して、地球生命科学の分野における次世代のリーダーを育成するときです。これはELSIにとっても新しく、わくわくする挑戦です。」

幅広く、そしてより専門的に

大学院コースでは、すべての学生にとって地球上の生命起源と他の惑星での生命の可能性に関する生物学、化学、惑星科学の基礎を学ぶことが必須となる。それに加えて、他の学部が行う授業を受講して、東京工業大学の地球生命科学部のコースを含む、様々な分野の基礎知識と高度な知識を習得することも可能である。ELSIと東京工業大学は相互的なパートナーシップを組んでいるため、同学の学生がELSIでクラスを受講することもできる。

さらに、大学院プログラムの一環として「産業界とのコラボレーション」と「グローバルサイエンスコミュニケーション」のコースを受講して、実践的なスキルを身に付け、実際に得た知識を社会で応用する方法を学ぶことも可能だ。

電気化学の教授で大学院コース教員の中村龍平教授。

学生は、自分のスーパーバイザーやELSI内外の研究者と話し合うことにより、自分の研究トピックを選択する。大学院コースは5年間のため、幅広い科学的知識と専門的知識の両方を習得しつつ、非常にやりがいのあるプロジェクトにも挑戦する。

「ELSIは、地球上の生命起源と地球外生命の研究に特化したカリキュラムを提供する世界でも数少ない研究所の1つです。」そう語るのは電気化学の教授で大学院コース教員の中村龍平。「ELSIでは、学術界で急速に認知されつつある宇宙生物学という新しい分野を研究するためのユニークな環境を提供しています。」

「新しい視点から科学的な質問について考える能力は、

 現在地球が直面している最も複雑な課題に取り組むために

 必要不可欠です。」

新しい観点を見出し、多様性を促すブレークアウトセッション

ユニークな「異分野融合」方式

ELSIは、異分野融合の促進を念頭に置いて設計された研究所である。各研究室は同じ建物内にあり、様々な分野の研究者が共同研究を行いやすくする一方で、新しいアイデアや創造的な問題解決策に繋がるように、気軽なディカッションや偶然の出会いが起こりやすい設計が施されている。

「新しい視点から科学的な質問について考える能力は、気候変動、人口増加に合わせた十分な食料、水、エネルギーの生産や将来のパンデミック予防など、現在地球が直面している最も複雑な課題に取り組むために必要不可欠です。」と中村教授が言う。「異なる分野のアプローチを組み合わせることで、ELSIの研究者は主要な科学的課題に立ち向かう新しい方法を見出だしています。」

アーリーキャリアディスカッション

真の国際的な環境

ELSIには、世界中の教員や学生から成り立つ多種多様なコミュニティが存在する。学生のほぼ半数が日本人以外で、コースはすべて英語で行われる。留学生は、ビザの申請や住居手続きなど、日本での日常生活に必要なサポートを受けることができる。さらにELSIでは日本語を習える授業も行われている。このユニークなサポート体制により、ELSIの学生は新しい国で安心して過ごすことができ、世界中の友人や同僚との親密なネットワークを作ることに集中できる。

「東京の下町を拠点とするELSIでは、学生は街を探索するなど日本生活を体験する機会がありつつ、本当の意味で国際的な職場環境の利点を堪能することができます」と松浦教授は言う。

世界をリードする教員

ELSI大学院コースは、宇宙生物学からバイオテクノロジー、電気化学まで、多様な分野の主要な研究者である8人の教員により監修が行われる。学生は、こうした教員や様々なグループのトップレベルの研究者と親密に研究を行うことになる。そこでは、分野間の共同研究や、理論的及び実験活動の両方を行うことが奨励される。さらに、将来のキャリアを助長するため、学問と業界での力強いネットワークを構築しなければならない。

ポスターセッションに参加

ELSIは、従来の大学階層システムを回避するため、オープンでフラットな研究環境を採用した。つまり、学生は経験豊富な教員から指導を受けることができる一方で、自身の研究を探求するため、ハイレベルな独立性と自律性が求められるということでもある。

やる気の溢れる学生が対象

本コースを志望する学生は、ELSIの教授に直接連絡をして、どんな研究に関心があるかを話し合わなければならない。教授と学生に共通するトピックを見つけることが重要なため、志望者は自身のスーパーバイザーになるであろう研究者の研究トピックについて事前調査をすることが必要だ。研究トピックに決めるにあたり、複数のスーパーバイザーに相談するのもいい。

シンポジウムを聴く

このコースは、自然科学を既に学んでおり、地球起源と生命科学に関する根本的な科学の疑問をより深く探求しようとする意欲的な学生を対象としている。国際的かつ異分野融合の観点から難しい科学の挑戦に立ち向かうための野望を持つ学生の応募を募っている。


利用可能な資金

  • ELSIは、全額出資の学生フェローシップを毎年最大10名に供与します。 学生は、奨学金と授業料の免除を受けることができます。
  • 博士課程の学生は、日本学術振興会(JSPS)、科学技術振興機構(JST)、産業界などから追加の奨学金を申請することができます。

申し込み方法

  • 興味のある学生は、ELSIの教授にメールで連絡してください:
    https://graduate.elsi.jp/
  • 志願者は、東京工業大学の国際大学院プログラムの申請書を作成し、入学部門に提出する必要があります。 翌年4月スタートのコースの提出期限は10月です。
  • 志願者は入学試験を受け、面接を受ける必要があります。

 


Asia Research News 2022 マガジンに掲載されている記事は、Asia Research News及び対象研究機関名を明記することを条件に再発行が許可されています。